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第38回いばらきのくすり展

「こども調剤体験コーナー2016」を開催して

茨城県病院薬剤師会 くすり展担当 新井 克明

「こども調剤体験コーナー」の写真


「薬と健康の週間」イベントの一環として「いばらきのくすり展」 が平成28年10月22日(土)、 23日(日)の二日間、イオンモール水戸内原店で開催されました。会場では医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器の展示、薬の相談コーナーの開設、こども理科教室、薬に関するクイズラリーなどが行われました。さらに薬事功労者の表彰、中学生を対象に「医薬品の正しい使い方」をテーマに募集したポスターの入賞作品の掲示と表彰式なども行われました。 
茨城県病院薬剤師会は毎年このイベントに参加しており、平成20年(2008年)からは「調剤体験コーナー」を開催しています。今回で9年目になります。自動錠剤散剤分包機を会場に持ち込み、小中学生を対象に、色や形の違うラムネやミンツなどの駄菓子を薬に見立てて処方箋に沿って調剤する体験をしてもらっています。そして作ったお薬(お菓子)とその服薬説明書の印刷された薬袋をプレゼントしています。更に、オリジナルのかわいい子供用お薬手帳を作成してプレゼント、お薬手帳の必要性と重要性を家族全員にインフォメーションしています。また、グレープフルーツジュースと牛乳を使った注射薬の配合変化の実験をみせる「科学で医療を支える病院薬剤師」のコーナー、そして昨年からは「検査値って、どう見たらいいの?」など、大人も満足する体験も加わり家族みんなで楽しめるコーナーになっています。服薬指導体験コーナーでは、患者さんに適切な医療を提供するために行っている病院薬剤師の仕事内容を、日本病院薬剤師会が作成したパンフレットを使って説明しています。今年は、子供たちが白衣を着て参加できるようにしたところ、親子共々とても喜んで頂けました。

この企画は、病院薬剤師の仕事を広く一般の方々に知ってもらおうという目的で始めました。しかし病院薬剤師の仕事が錠剤のピッキングのみの単純な仕事だと思われはしないか?という危惧もあり、その点には特に注意を払いながら作り上げてきました。そして、新鮮さが欠けてきたら何時でも止めようとコアスタッフとは開始当初から相談していました。ところが、年に一度開催で会場も決まっていない企画であるにもかかわらずリピーターが多く、ふしぎに色あせません。参加者の子供たちを駆り立てるものは何なのか? それは薬剤師の仕事がそれほど魅力的でステキなものなのだと思うようになりました。「灯台下暗し」でした。

初めてスタッフとして参加してくれた薬剤師さんたちは、当日限りで初対面の親子連れに薬剤師の仕事を教えます。はじめはぎくしゃくしていますが次第に気合が入りだします。一期一会の出会いでわずか十数分の時間の中で子供たちやご両親の心をつかみ薬剤師に対する理解をつかみ取ります。普段の業務の中では気付かない自分たち薬剤師の事、業務の事、自分たちが何をしているのかをイベントという状態が気づかせてくれるのだとわかりました。責任者の私の役割は朝一番でこう指示するだけです。「くれぐれも事故の無いように!薬剤師の業務をこどもたちに体験させて説明してください。いつもの業務の中で考えている事や、自分の思いをどうぞこの場で自由に吐き出して下さい。」「内容に関して注文は付けません。」。 試行錯誤の一日を終えて、スタッフの薬剤師たちは、自分の変化に気付きます。自分のしている仕事の意義、素晴らしさ、問題点、足りないところ、目標など。そして翌日から自分の施設に戻り仕事に戻りますが、今までと業務の見え方が違ってきたように感じると言います。今では発案者の考えを通り越し、参加した薬剤師自身のフィロソフィー(philosophy)を変化させているという思わぬ方向に進化しています。このプロジェクトは、むしろ薬剤師研修のイベントだなと思う今日この頃です。最近は、新人薬剤師さんの教育にこのイベントを利用する薬剤部長さんも多くなりました。後日行われた担当スタッフの打ち上げでは、皆、遠方に住んでいるにもかかわらずほとんどの方に集まって頂き、薬剤師業務議論に花が咲きとても盛り上がりました。

 会場は毎年家族連れが多く、子供よりも親のほうが夢中になる場面も見受けられ、盛況な企画となっています。参加者からは、「薬剤師のことを全然知らなかった!」「病院薬剤師ってすごいですね」「頑張ってください」など激励の言葉も頂きました。今では秋になるとどこで開催されるのかを調べてわざわざ遠方よりおいで下さる母子のリピーターや、薬学部の学生のなかには、この体験がきっかけで薬剤師を目指したという学生まで現れています。
最近は参加した青年から、合法な危険ドラッグってあるのですか?タバコは問題ないのでしょう? というドキッとする質問も受けます。危険ドラッグは直ぐに人を地獄に突き落とす毒、タバコは一生かけてじわじわ地獄に突き落とす毒、どちらも何の有益性もありません。けっしてドラッグ(薬)なんかじゃないです。一度でも手を出すと脳の構造が変わってしまい抜けられなくなる恐ろしい毒ですから決して手を出さないように。と説明しました。第二の清原やASKAを出してはいけない。将来のある若者が危険な薬物(毒)で道を誤らないように導くのも薬剤師の重要な使命で、このイベントで次に企画しなければならない大事な仕事かもしれません。
我々が手作りで行っている病院薬剤師の体験コーナーの企画は、参加した一般の方々にも、主催者側の病院薬剤師にも、どちらにも有益性があり、「顔の見える薬剤師」のイベントとして確実に成長を続けています。今後も会員の皆様のアイディアをお寄せ頂き、益々進化させていければと考えております。

調剤体験 参加者:

1日目 140人   (当日スタッフ12人)
2日目 210人   (当日スタッフ11人)
合計 350人            

企画:新井克明、柴田亨、高橋昌也、髙橋正明
協力:株式会社 トーショー、テルモ株式会社